研究概要 |
本研究の目的は,子ども期における「身体」のジェンダー化の諸側面を,社会的・文化的文脈との関連で実証的に明らかにすることである。研究の初年度にあたる本年度の研究実績は次のとおりである。 研究の第一段階として,身体とフェミニズム・ジェンダー,教育における子どもの身体に関する先行研究にもとづき,本研究の理論的枠組みの構築を行った。その結果,次のような知見を得た。(1)子ども-大人関係とジェンダー関係は,差異を自明としている点および非対称である点で類似している。(2)子どもは単に大人に対する従属的カテゴリーにとどまらず,ジェンダーおよび権力について複合的/錯綜的/多元的な実践を行う存在でもありうる。(3)子どもは,二分法的なジェンダーを構築する主体となりうる。 あわせて,先行研究にもとづき調査の方法論を検討した。 第二段階として,子どもたちの生活世界における「身体」のジェンダー化の状況を明らかにすることを目的に,幼稚園・保育園での調査を行った。中国地方の幼稚園1園では9月・11月・2月の計11日間,終日観察を,九州地方の保育園2園では1月・2月・3月の計19日間,午前中のみの観察を実施した。記録のため,園の許可を得てノートおよびビデオカメラを使用した。観察期間中,2005年11月および2006年3月に,教師・保育士計12名,管理職1名を対象に半構造化面接調査を行った。経験年数,園における保育活動,子どもの身体およびジェンダーに関する認識,本人のジェンダーに関する経験を尋ねた。会話は,回答者の許可を得てICレコーダーに記録した。現在,会話データより逐語録を作成し,順次回答者自身に返却しているところである。 なお,観察園の保護者を対象にした質問紙調査(2006年度4月・5月に実施)に向け,調査票を作成中である。本年度の調査で得られたデータの分析は,来年度に継続して行う予定である。
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