日本医学哲学・倫理学会第25回大会において研究発表した内容を「臨床研究におけるアフターケア倫理 その理念の提示」というタイトルの論文にまとめなおし、同学会に投稿、受理された。同論文は『医学哲学 医学倫理』第25号に掲載された。本論文は、本課題「臨床医薬研究におけるアフターケア倫理の構築」の総括となる論文である。これまでの臨床医薬研究では、なぜ事後の視座が忘れられてきてしまったのかを分析し、どのように生命医学倫理の四原則を解釈していけば、我々は事後の視座を獲得できるのか、またそれを次の事前に結びつけていくには何を理念とすべきかを具体的に示した。 本課題を遂行するうえで痛感したことを記しておくと、一般人の、臨床研究に対する認知度や関心の低さが研究を遅滞させているということである。臨床研究は、対象が患者であれ健常者であれ、基本的に、一般のヒトを対象にした研究である。一般人の認知度が低く、さらにマスコミの報道も少ないため、研究の事後に起こる様々な問題が問題として浮上してこない。被験者の声を掬い上げるなどして、社会的な認知度と受容性を高めていく地道な作業が今後求められるべきだろう。 研究代表者は、平成19年4月にこれまで所属していた薬学部を離れ、工学系の大学へと転任した。これは本課題の遂行にとって大きな障碍となったが、臨床研究を医薬だけの問題とせずに、もっと広い視座、つまり科学技術と社会の接点という視座から捉え返す契機にもなった。例えば、「リスク・ベネフィット評価」をTA(Technology Assessment)やCBPR(Community-based participatory Research)といった観点から見直す作業が不可欠だと考えるようになった。この問題は今後も継続して考察していき、成果を発表する予定である。
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