本調査の目的は、1920〜1940年代の複数の地域社会における妹尾義郎の宗教運動の調査・研究である。今年は長野県、岡山県、広島県、山梨県で現地調査を実施し、一次資料の収集と関係者への聞き取り調査を行なった。また、これらの地域以外の京都、名古屋、東京でも資料収集を実施した。 資料収集については、上記各地の公共図書館や研究機関、大学図書館等を通じて、妹尾義郎や運動組織のメンバーの著作を始め、大日本日蓮主義青年団機関誌『若人』、新興仏教青年同盟機関誌『新興仏教の旗の下に』『新興仏教』、仏教社会(主義)同盟機関誌『ブッディズム』『前衛仏教』『仏社同盟ニュース』など、貴重な一次資料をかなり集めることできた。現在、機関誌については、目次のデータベース化を進めている。 また、現地調査として、妹尾が第二次世界大戦中から逝去するまで過ごした長野県松本市、故郷の広島県庄原市東城町、旧制中学時代を過ごした岡山県高梁市、日蓮主義青年団山梨支部のあった山梨県甲府市を訪問し、妹尾富子氏(義郎の長男・鉄太郎氏の妻)、妹尾稲造氏(鉄太郎・富子夫妻の長男)、妹尾道郎氏(妹尾義郎の甥)、高梁基督教会の八木橋康広牧師、小野達雄氏(鏡中條農民組合の小野永雄氏のご子息)に話を伺った。他にも作家の稲垣真美氏、妙本寺住職の平野信行氏、岡山大学名誉教授・関西福祉大学教授の坂本忠次氏に貴重な話をお聞きすることができた。 以上の調査を通じて、妹尾の生涯や日常的な活動の様子を始め、一部の地方支部の活動を把握することができた。とくに実際に市議会選挙に立候補し、具体的な政治参加を行なった新興仏教青年同盟岡山支部の活動については、その詳細を調べることができた。 来年度はまだ完全ではない一次資料の収集を進めるとともに、今年度訪問できなかった地方への現地調査に臨みたいと考えている。また、関係者への聞き取り調査も引き続き継続する予定である。
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