本研究は、地域社会において宗教運動が果たした政治的機能を明らかにすることを目的としたものである。その事例として、仏教者の妹尾義郎(1889〜1961)が組織した大日本日蓮主義青年団(1919年結成)と新興仏教青年同盟(1931年創立)による宗教運動を取り上げ、分析を行った(いずれも現存しない団体) 2年間にわたる調査を通じて、両団体の支部所在地だった8都道府県(岩手、福島、東京、山梨、広島、岡山、山口、和歌山)、関係資料が所蔵されている38ヶ所の研究機関等を訪ね、一次資料を収集するとともに、20名の関係者への聞き取り調査を行った。 その結果、全国に散逸していた団体の機関誌(紙)、パンフレット等を相当程度、収集することができ、平成18年度末に作成した研究成果報告書に、その目次データベースを掲載することができた。これは、国内外初の試みである。 また、運動に関わったメンバーの関係者への聞き取り調査を通じて、これまでの研究史では明らかになっていなかった新たな事実も得ることができ、その成果の一端は、学会報告や論文を通じて公にした。 また、研究成果報告書に掲載した論文では、山梨県と岡山県の事例を取り上げ、上記団体の地方支部がどのような活動を実践し、その活動が当該地域でどのような政治的機能を果たしたのかを明らかにすることができた。これらの支部は、戦前期日本の政教関係の下、個々人の私的領域にとどまらず、各地域社会の公的領域への進出を積極的に図り、仏教(日蓮主義、新興仏教)の理念にねざした制度的かつ非制度的な政治参加を行ったという知見を得ることができた。
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