新海竹太郎に関する調査では、遺族所蔵の資料を解読していくうえでの基礎となる、彼の詳細な「年譜」および「作品目録」の作成を進めている。「年譜」は、以前、拙著『彫刻家・新海竹太郎論』(東北出版企画、2002年)に掲載した年譜をもとに、さらに資料収集を進め、それを補訂する作業を行っている。また「作品目録」は現在までに判明している作品をデータベース化し、今後の資料解読にともない適宜追加できるように準備を整えた。 これと合わせて、資料の整理・解読をまず彼の自筆ノート類から開始している。 このほか、齋藤素巌、日名子実三、陽咸二ら構造社に所属した彫刻家たち、および朝倉文夫についてもそれぞれ一次資料にあたりながら調査を行った。 齋藤素巖については、小平市と武蔵野美術大学による小平市所蔵の齋藤素巌作品調査に加わり、現存する彼の石膏作品を調査、および彼に関する文献資料などを収集し、彼の近代彫刻史上の位置づけに関する考察を行った。その成果は、2005年11月に武蔵野美術大学美術資料図書館で開催された展覧会「齋藤素巖の仕事」展と、その際に発行されたパンフレット(拙論「齋藤素巌について」所収)で発表した。この調査については2006年度に詳細な報告書の刊行が予定されており、そこに掲載される拙論も現在執筆中である。 また構造社については、2005年度に宇都宮美術館ほか3箇所の美術館で「構造社展」が開催され、その展覧会の準備に関わらせていただけたことで、一次資料を用いた詳細な調査を行うことができた。 朝倉文夫に関しては、台東区立朝倉彫塑館において彼の日記や彼が作成させた新聞記事のスクラップブックなどを調査させていただき、その成果の一部は同館において行った講演「彫塑が若かったころ-明治後期の彫塑家群像-」などで発表した。
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