新海竹太郎に関する調査・研究では、次の作業を同時並行で進めていった。 (1)彼の詳細な「年譜」、および昨年度データベース化した彼の「作品目録」を、新たに作品調査を行なうなどして、補訂・加筆し、さらにより見やすいかたちに編集している。 (2)自筆ノートなどをスキャニングして画像として記録、編集し、またとくに出納関係のノート、大塚保治による講義の聴講ノートなどを中心に、それらの解読・翻刻を進めた。 (3)翻刻を終えた彼の「出納ノート」などをもとにして、大正期における彼の収支の記録を研究し、それをもとに11月に開催された日本アートマネジメント学会全国大会において「彫刻家の収支の記録-新海竹太郎(1868〜1927)の資料から-」を発表した。 齋藤素巖については、昨年度から引き続き小平市と武蔵野美術大学による小平市所蔵齋藤素巖作品調査に参加し、主に齋藤素巖の美術史的位置について、調査を終えた作品などをもとに研究・考察した。その成果として論文「齋藤素巖の視線--彫刻家とその作品が見つめるもの」を執筆し、年度末に刊行された報告書『齋藤素巖の仕事 共同研究「小平市所蔵 齋藤素巖 遺作研究と作品の保存・活用について」』にその他の調査・研究成果と合わせて掲載した。 朝倉文夫については、文献資料調査を継続したほか、大分市が管理する彼の屋外彫刻作品のメンテナンスを保存修復家、学生ボランティア、市民ボランティアらとともに実施し、より多角的な視点からその活動を考察した。 このほか、山形における新海竹蔵の作品調査など、近代日本彫刻史に関する作品・文献等についての調査を進めた。
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