平成17年度は主として研究環境の整備及び資料の収集に当たった。その成果は、たとえば、写真集『ニューヨーク らかんスタジオと鈴木らかん清作』(有限会社らかん、1994年)および武蔵野市立吉祥寺美術館で開催された展覧会(2005年)の調査などにより、『ダンス!20世紀初頭の美術と舞踊』展(2003年)で取り上げた舞踊家・伊藤道郎が、アメリカ時代にすでに写真家・中山岩太の被写体になっていたことが明らかになった。1930年代に中山岩太は日本で石井漠舞踊団の舞踊家たちが跳躍する姿を多数撮影しているが、これらの写真の背景を考える際、興味深い示唆を与えてくれるものであった。 また、ベルリン国立図書館における調査で、石井漠の1923年のベルリンでの公演を紹介する雑誌・新聞記事を確認することができた。今後も継続的に調査する必要があると考えている。 これらの調査を踏まえて、論文「美術と舞踊の交錯--川島理一郎の舞踊経験から」(『美術フォーラム21』(2006年4月刊行予定)所収)において、美術と舞踊の関係の一考察を行った。 さらに、「崔承喜の「朝鮮舞踊」をめぐって」(平成15-16年度基盤研究(B)(1)「20世紀における戦争と表象/芸術」(研究代表:長田謙一))で行った研究および、その成果発表(平成17年度研究成果公開促進費(A)「戦争と表象/美術20世紀以後」)により、新たな資料や情報が得られつつあるので、今後さらに崔承喜に関する調査も継続し、本科研による研究の深化につなげたい。
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