本年度は、前年度の課題であった日本に実際に伝わっている高麗茶碗の生産地の特定と、その造形的要因を探るため、以下の研究調査を行った。 国内調査 ・対馬・金石城跡 対馬・金石城跡から出土している17世紀の釜山窯茶碗の調査により、高麗茶碗のランクが、白磁(軟質白磁)・一部の三島手>呉器・伊羅保という確認を行なった。すなわち17世紀の時点で蕎麦・斗々屋の系譜が消滅し、軟質白磁の系譜はそのまま継承されていき、ひとつの大きな潮流をなしているとの仮説をたてた。 ・堺環濠都市遺跡 堺市教育委員会埋蔵文化財調査室の協力のもと、高麗茶碗に類する茶碗類の科学分析を行なった。その結果、白い高麗茶碗のほとんどが慶尚南道のなかでも、山清郡の製品が高い比率を占めることが明らかとなった。 海外調査 ソウル市冠岳山の高麗末頃の高麗白磁窯址を調査し、軟質白磁が高麗時代の系統を引き継ぐのではなく、朝鮮時代から始まることが明らかとなった。これにより、高麗白磁から高麗茶碗にいたる白磁茶碗の系譜を確認することができた。
|