本年度も内外の文庫に出張し、『韻府群玉』卿『氏族大全』『翰墨全書』『聯珠詩格』の諸版本について書誌調査を実施した。また前年度取得の書誌書影も併せて検討を加え、『韻府群玉』のうち本文の最も豊富な「増続会通」本について、刊行の早い朝鮮古活字刊行の諸本を取り上げて校勘を行った。比較研究の結果、乙亥字刊行本の中に補刊関係に当たる両種が伝存し、日本の古活字版、和刻本は、この間に成された別種本に出ることが判明した。また幸い『朝鮮王朝実録』により、この間の作業を伝える文献記録を徴し得たため、『増続会通韻府群玉』の版本の濫觴が朝鮮朝にあることを検証することができた。さらに韓国高麗大学での調査によって、同じく朝鮮訓錬都監字本の全像をほぼ明らかにすることができた。これら朝鮮本『増続会通韻府群玉』について調査結果をまとめ、研究論文を作成公刊した。上記の他、『翰墨全書』類の諸版本について、内外の主要な所蔵機関に赴いて約三十本の調査を果たし、これらはほぼ元版2種・明版5種に収斂することを突き止め、この7版種は3系統の本文に整理できることが検知されるなど、版本研究の基礎を固めることができた。書影取得の手配も整ったため、来年度に版本研究を行い成果をまとめる準備を遂げた。また『聯珠詩格』について、新版種の書誌収集につとめた結果、五山版の伝写本を1部、和刻本について新たに1版種を加えた一方、朝鮮版と著録されていたものが既知の江戸初刊本であるなど、曲折を経て版本研究進捗の度を加えている。これも来年度以降の研究小括、日本漢籍研究総谷化への準備としたい。
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