1 中世の代表的な系図『尊卑分脈』及びその他の古系図研究のため、各所に所蔵される長楽寺本『源氏系図』諸本の書誌的調査をなし、妙本寺本、内閣文庫本、北酒出本『源氏系図』・『尊卑分脈』との前後関係を記事の考証等から比較し、各系図の共通祖本が南北朝時代以前に、成立して居た事を実証した(「長楽寺本『源氏系図』成立試論」)。 2 『尊卑分脈』現存最古の古写本である菊亭本の平氏系図にある書き入れが、独自の歴史的価値を持ち、散逸した古記録に基づいて居る可能性の高いことを、平家の系図考証と併せて発表する(「桓武平氏正盛流系図補輯之裏成」(『米沢史学』22、平成18年6月刊行予定))。 3 現存する源氏系図では古態を残す北酒出本『源氏系図』の史料的価値を明らかにし、平安末期の歴史的事件・『平家物語』との関係を明らかにした(「悪僧信実の晩年」(『米沢国語国文』35号に発表予定)・「溢れ源氏考証補闕」(近時発表予定))。 4 近年、紹介された入来院本『平氏系図』の北条氏系図の記事から、従来、古記録の残存が極端に少なく、詳細が不明であった永仁四年の吉見義世謀反の背景に、源氏の貴種と姻戚で結びついた名越家と得宗家との対立があることを指摘した(「永仁吉見義世謀反の背景」)。 5 武家の系図が含む氏族の始祖伝承として、千葉氏、伊予河野氏、蝦夷安藤氏の系図伝承を整理し、各々についてその成立を論じ、思想的背景、同時代の説話・軍記文学との関係について研究し、学会誌に発表する。
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