本年度は、基本研究文献・資料の収集と整理を中心に研究を進めた。2005年8月末にパリ・ソルボンヌ大学で開催されたIVG(国際ゲルマニスト会議)では「文学と科学の相互交流」をテーマにするセクションに参加、研究者間で積極的な情報交換に努めた。また同セクションにおいて、1830年代に闘わされた自然科学研究の方法論および将来像に関するパリ・アカデミー論争とその際ゲーテが果たした役割について、ドイツ語による発表Ein dichterischer Beitrag zur >Evolution< der Wissenschaften. Goethe und der Pariser Akademiestreit (1830)を行なった。 また、これに先立つドイツ国内短期滞在で、ゲーテ解剖コレクションおよび関連資料を調査・入手できた。研究対象のビジュアル化・再現化の問題については、すでに6月に小説『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』を用いて、「ゲーテと立体解剖模型」というテーマで日本語による中間報告を行なっていたが、これを補足してドイツ語論文Der Kadaver and der Moulageにまとめ、発表した。さらに日本と西洋の差異に注目し、10月末、上智大学で開催された国際シンポジウムでドイツ語発表Die Wiederkehr zum ganzen Korper. Goethe als Schuler Loders and die plastische Anatomieを行なった(なお今年度のドイツ語発表2点については、いずれも報告論文集として刊行が予定されており、原稿提出済)。 最後に、天文学から気象学が独立する移行期を調査するにあたって、近代天文学領域で女性として例外的に功績のあったカロリーネ・ハーシェルおよびシャトレ侯爵夫人の2名の生涯と業績についてまとめ、「女性と近代科学」の関係にも注目した。
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