研究概要 |
本研究は、焦点を1840年から1900年までに絞って、当時の様々な社会問題(労働形態の変化、南北戦争の負傷兵、女性の社会進出、移民の急増など)と、読み物(小説、詩、雑誌、新聞など)の中に見られる障害者表象との関係に焦点を当てるものであるが、初年度はジェンダーの問題と障害者表象との関わりについて調べることを目標とした。 Harvard Universityにおいて、これまでに調査していたAtlantic Monthly, Harper's Monthly, Harper's Weeklyに、Galaxy, North American Reviewなどを加えた該当年代の出版物を調べた所、障害をもった人物として、男性よりも女性が多く表象されていること、文字メディアばかりでなく、写真という視覚メディアもこの時代大変流行しており、「標準的でない」身体を被写体としたものも数多く売られたこと、また、医学・科学の分野では勿論のこと、一般的にも身体に関する興味がこの時代は大変高まり、障害者をデータ化すると共に、体操や美容整形の流行など、健全で美しい身体を求める動きが高まっていたことなどが分かった。 当時の"the cult of true womanhood"と女性障害者表象にはつながりがあり、女性の社会進出や労働問題を扱った読み物の中で、特にそれが顕著に表れている。Domesticity, Christianity, femininityを中流階級女性に不可欠な要素とする時代、それらの要素を表出させて女性が社会に出ることを正当化するためのvisual rhetoricとして、身体障害(特に外見から判別可能な障害)が様々な文字テキストの中で使われていたと考えられる。
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