平成17年度の研究は、1.文体論を用いた文学・語学研究と、2.英語教育現場の視察、の2つに分けられる。本研究の目的は文学研究と英語教育の融合であり、本年度はその基礎研究として位置づけている。 1.7月に英国で行われたPoetics and Linguistics Association(PALA)の国際大会に参加して、「A Stylistic Analysis of Middlemarch : Effects of‘Empathy'and Two Levels of Polyphony」というタイトルで研究発表を行った。これは、小説における「視点」と作品解釈の問題を論じたもので、文体論の根幹をなす「テキスト中心」という姿勢が文学批評において不可欠であることを強調したものである。この主張は、「文学」と「英語(語学)教育」の接点である「言語」の役割の再確認であり、本研究の目的である「文学作品を用いた英語教育」の遂行にとって欠かせない点である。また、PALAでは「文体論を用いた英語教育」に関するセミナーにも参加し、世界各国の試みを学んだ。 2.英国のArnbrook小学校における英語(国語)教育と、尾道市立土堂小学校における英語教育の視察を行った。Arnbrook小学校では、生徒は低学年から「説得力のあるスピーチ」の練習を行っており、Mind Mapの活用など、日本の語学教育関係者が学ぶべき具体的教授法も数多く見ることができた。一方、土堂小学校では、徹底したテキスト(『ごんぎつね』の英訳)の音読を行うなど、いわゆる「英語との触れ合い」のレベルを超えた本格的な英語教育を実践していた。また、電子ボードを活用するなどハード面においても充実しており、土堂小学校の視察は、本格的導入が検討されている小学校英語の教育・研究と問題点を考える上で重要な視点を与えてくれた。
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