本研究は、カウンセリング場面において専門家とクライアントが互いの発話をどのように解釈し、その結果として相互行為の展開にどのような影響が現れるのかを解明することを目指している。 特に、1)専門家がクライアント自身の体験や感情の語りについての解釈をどのように自分の発話に反映させ、そのことがその後の相互行為の展開をどのように方向付けるかを実証的に検証し、2)そうしたカウンセリングの協同構築という活動のうちに埋め込まれた様々なレベルの「制度性」を洗い出すこと、この2つを目的とする。 本年度は、まず、研究を進める上で欠かせない図書や文献・資料を購入・収集・整理し、ビデオデータの分析に必要な機器類を揃えて研究の環境を整えた。また、すでに収録している婦人科の医療的カウンセリング場面のデータ分析を中心に研究を進め、その成果を平成18年5月にヘルシンキで開催される国際学会で発表する。(発表要旨はすでに受理されている。)この学会発表では、1)クライアントが自らの性質や性格について語る談話に焦点をあて、クライアントと医師の相互行為の中で、心の問題と身体症状の関連付けがいかにして構築されているか、および2)心と身体が関連付けられる言語活動においてどのような制度性見られ、それは、治療方針の決定にどのような影響を与えているか、についての分析結果を報告する。この研究結果は、今後、他のタイプのカウンセリング場面(心理療法など)を分析していくための具体的な糸口を与えるものである。 さらに、今年度3月には、国際的に活躍している第一線の会話分析専門家によるセミナーを企画し、かつ、自ら受講生としても参加し、専門的な訓練によるデータ分析力の向上をはかる。
|