本年度は、バリ語の動詞の形態論に重点をおいて研究を行った。 まず、塩原がこれまでの調査によって収集した動詞のデータに、現在公刊されている辞書Barber(1979)、Kersten(1980)、からのデータを加えた動詞に関するデータベースの構築を開始した。データベースはデータベースソフト「ファイルメーカー」を用いて構築しており、派生語、語根、英語訳、日本語訳、インドネシア語釈、いずれからの検索も可能な形で構築中である。 また、個々の動詞に関して、これまで分析したテキスト(形態素分析、逐語訳、各文訳を行ったテキスト)における用例を確認した。 さらに、語形成を行う接辞のうち、特に自動詞を形成する接辞である接頭辞ma-に注目し、その機能を明らかにする試みを行った。他の接辞と同様、接頭辞ma-は拘束語根、名詞語根、他動詞語根など、さまざまな種類の語根に付接する。語根と派生された動詞の意味の対応は、語根の種類によってさまざまであるが、派生形はいずれも、「終着点を伴わない状況を表す(atelicである)」という意味的特徴を持つのだということが明らかになった。この内容は、論文「バリ語の自動詞を派生する接頭辞ma- --終着点が想定されない状況を表す動詞を派生する接辞----」として、来年度初頭に刊行される予定である。
|