研究概要 |
本研究では,学問の世界における不正行為への日本社会の意識が高まる中,学問の府たる大学,中でも将来研究者を志す学生が多い研究大学において,学部学生が剽窃に関しこれまでどういう教育を受けてきたのか,どれほど正確に知っているのか,どのように考えているのかを明らかにし,それを受けて今後何をどう教えたらよいかについて考察した。その結果,日本人大学生のほとんどは入学以前に剽窃について学んだことがなく,剽窃に関する正確な知識に欠け,さらに剽窃に対して寛容であることがわかった。また,適切な教育の欠如のせいか,彼らは剽窃に対し自己流のさまざまな考えをもっており,加えて学習経験のある集団とない集団の間には,剽窃に関する正確な知識の有無や意識を身につけられるよう,日本の大学においてはライティングに関する手引書を推薦図書として紹介したり,ホームページを活用し自学自習をうながしたり,カリキュラムの中で剽窃および適切な引用に関するルールを学生に直接教えたりすることを提案した。また,剽窃は機械的に(文字通りコンピューター・ソフトウェアを使って)その有無が認められるものではなく,その判断は文脈および共同体に委ねられれるものであることから,剽窃を単に不心得な学生や研究者の問題というよりも,彼らの属する文化におけるテクストの関連性の問題としてとらえることの意義を指摘した。
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