本研究の目的は、以下の通りである。 1.方言資料の乏しい地域を選択し、高齢話者の琉球方言の記述的研究を行い、琉球方言資料の増幅に努める。地域としては、北琉球方言からほぼ最北の鹿児島県大島郡笠利町大字用方言、南琉球からほぼ最西南の与那国比川方言とする。特に用方言の資料は少なく、音韻、文法、語彙の体系調査を行いその実態を明らかにする必要がある。与那比川方言においても中心地の祖納方言に比して資料が少ない。また、約30年前の資料であるため、現在の実態を把握したい。 2.両方言とも琉球方言の中でも特にバラエティに富んだ音声が多く観察される。これらの特徴的な現象の中には報告はされていてもその要因及び成立について明らかにされていないものもある。それらを両方言、必要であれば他地域の方言資料も比較することにより解明したい。 以上の目的を達成すべく、平成17年度は奄美方言の調査研究を行った。 奄美方言の多くは琉球方言の中でも母音の数が比較的多く7つであり、子音においても無気喉頭化音が多くあらわれ、音素として重要な機能を果たしている。このように琉球方言の中でも奄美方言はバラエティに富んだ方言であると言える。 本年度は笠利町大字用方言、佐仁方言を中心に以下の調査を実施した。 (1).音韻体系の調査 (2).動詞・形容詞の活用体系の調査 (3).語彙の調査 以上の調査から当該方言の体系(80歳代以上)を明らかにした。これまで調査を行った、奄美大島南部の古仁屋方言とも比較しながら、奄美方言の言語変化の傾向を把握したい。これは、琉球方言における言語変化の道筋を明らかにしていく上でも重要であると考えられる。今後、必要に応じて補足調査も行うである。
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