本研究は、言語の韻律的側面に関し、外的な環境刺激が獲得過程に与える作用について検討するため、特に語のアクセントに着目し、幼児および児童を対象に言語心理学的手法により知覚実験を行なって、幼児期における環境刺激への感受性を調べることを目的としている。幼児から言語音声の発話および知覚資料を収集し、これら韻律情報に対する知覚的側面と発話・生成との相互の連関を検討して言語獲得機構および言語の普遍的獲得過程、個別的過程についての議論を行なう。言語の普遍性、個別性を扱うには言語間比較・対照が不可欠であり、日本語の代表的アクセント地域である東京アクセント地域、京阪アクセント地域(京都方言)、二型アクセント地域(鹿児島方言)に生育する幼児を実験対象とした。なお、比較としての養育者(成人)も対象である。本年度は以下の研究を実施し、成果を得た。 (1)アクセント知覚実験:2〜6歳児を対象として、東京、京都、鹿児島の3地域でアクセントの知覚実験を昨年度に引き続き行なう。実験では、検査語彙にいくつかのアクセント型を合成した刺激音声を用意し、被験者に呈示し、反応を求め記録した。 (2)アクセント発話生成実験:前年度に引き続き、アクセントの発話資料を補助的に収集した。検査語彙は上記アクセント知覚実験で用いた語とした。知覚実験に参加した者と同一被験者(話者)が対象である。被験者の発話生成を音声収録器にてメモリカードに記録した。 (3)結果の予備的まとめ:前年度および本年度の実験結果のまとめを実験と並行して行なった。日本音響学会聴覚研究会、ホノルルで開催された国際会議、4th Joint meeting of ASA/ASJ参加し、関係する研究者と積極的な議論を行ない、結果を整理し直し、総合的なとりまとめへの準備を進めている。
|