研究概要 |
サハリンで使用されている日本語の地位を明らかにし,サハリンにおける日本語の位置づけを明らかにすることを目的とする。具体的には,次の3つの時代における日本語の地位に着目する。 1 日本統治時代以前における日本語の地位 2 日本統治時代における日本語の地位 3 日本統治時代以後の日本語の地位 上記3点を明らかにするために,(1)文献調査と(2)面接調査を実施した。文献調査は2005年6月27日から7月1日にかけて,北海道大学付属図書館,北海道立図書館で行なった。面接調査は,日本統治時代に日本語教育を受けたウイルタ人やニブフ人を対象とした調査を2005年11月4日から14日にかけてポロナイスクで実施した。また,日本に引き揚げてきた日本人に対する調査を2005年5月13日,6月17日に行なった。 調査で得られた文献資料から,サハリンへの出稼ぎ労働者の言語使用状況,敷香教育所の授業に関する情報,戦後,日本人が引き揚げるまでの間に発行された日本語新聞についての状況が明らかとなった。この他には,日本統治時代よりも前の時代では,アイヌ語がリンガフランカとして用いられ,日本語の地位は低かったことが確認できた。 面接調査からは,日本統治時代から現在にいたるまでの日本語使用状況について,朝鮮人,日本人,ウイルタ人,ニブフ人から情報を収集することができた。日本語が普段の言語生活でも気の置けない友人の間で用いられていたことが確認された。調査の様子はすべて録音したが,そこで使われた日本語には北日本を中心とした方言的特徴が認められた。
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