本年度は制限的関係詞節(制限節)の「指示」の問題に焦点を当てた。具体的には、制限節の先行詞が定名詞になる場合(定関係詞節e.g. the tulip that is yellow)と制限節の先行詞が不定名詞になる場合(不定関係詞節e.g. a tulip that is yellow)の意味的特徴について考察した。 安井(2000)はこれらの2種類の制限節の意味的特徴についてつぎの主張をしている。 (1)(1)定関係詞節は限定機能をもたない。 (2)不定関係詞節の不定冠詞の排他性(exclusiveness)は関係詞節を除いた先行詞の名詞だけに適用される。 しかし、つぎの例は(1)の主張の反例となると思われる。 (2)There are two tulips in a vase. {The / ^*A} tulip that is yellow is dying and the other one that is red is still vigorous. 花瓶に赤と黄色のチューリップが一本ずつ生けてある状況で黄色のチューリップを指すには定関係詞節を用いなければならない。定名詞the tulipは赤と黄色のチューリップのいずれをも指しうるが、関係詞節によって黄色に限定されている。また、不定関係詞節の不定冠詞の排他性が先行詞の名詞のみに適用するとすれば、a tulip that is yellowはチューリップが複数本ある限り適切となるはずだが、実際には容認されない。したがって、定関係詞節は(不定関係詞節と同様に)限定機能をもち、不定関係詞節の先行詞に含まれる不定冠詞の排他性は先行詞の名詞のみならず、関係詞節を含めた全体に適用されるという結論に達する。
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