本年度は数詞を含む日本語関係詞節に焦点を当てた。目本語では、(1a)のように主節の内容と関係詞節の内容がと因果関係をもっとき、数詞(「1冊」)の「数量詞遊離」が許容されないが、(lb)のように主節の内容と関係詞節の内容が密接に関係しない場合には数量詞遊離が許容される。 (1)a.?^*山田は[その後の人生を変える]本を1冊買った。 b.山田は[その日発売された]本を1冊買った。 (1a)は主節の表す事態(「本を買う(こと)」)が関係詞節の表す事態(「本を買った後の人生が変わる」)に時間的に先行している点で(lb)とは決定的に異なる((lb)は逆の順序)。なぜ主節の表す事態が時間的に関係詞節の表す事態に先行できないのか。これは関係詞節の内容が主節の内容に「依存」していることによると思われる。つまり、数詞「1冊」が遊離するとそれは副詞として主節の述部の一部を構成することになる。そして、その述部が関係詞節の内容を規定するため、結果的に不自然な状況を表してしまうのである。(1b)と(2)について主節と関係詞節の関係をみてみよう。 (3)a.1冊の本を買う→1冊の本を買った後の人生を変える b.その本を1冊買う下→#その本を1冊買った後の人生を変える (3b)は人生を変えるのに本の冊数が関わっているようで一般通念的に想定しづらい状況を表している。つまり、人生を変えるのは本の内容(つまりタイプ)であるから、その点では同じ本を1冊買うか2冊以上買うかというトークン数は問題にしないのが普通である。このように関係詞節の内容が主節の述部に依存した構文である(1a)では数量詞遊離が許容されないのだと考えられる。
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