日本語学習者の読解指導を効果的に行うためには、教師が学習者の読解プロセスを理解することが必要である。しかし、この読解プロセスを調べるための従来の方法は、時間とコストがかかりすぎ、現場の教師が利用するのは難しい。そこで、現場の教師が教室で利用でき、個々の学習者の読みの特徴もつかめる、「Webを利用した読解プロセス測定システム」として実現するのが、本研究の目的である。 初年度は、Web上に教材となる日本語の文章とその読解をサポートする情報(語彙、文型、談話、構造)を用意し、学習者がどのサポートを利用したかをサーバーにログとして記録して読解過程を推測するシステムを作成した。そして、システムの評価を国内・海外に分けて2回行った。その結果、システム操作の十分な説明が必要なこと、学習者が利用するサポート情報に偏りがあること、1文あたりの読解時間も測定する必要があることなどの問題点が浮かび上がった。 本年度は、これまでに得られたデータのうち、学習者の読みの特徴や問題点となる箇所について細かく分析を行った。また、一番の課題である学習者が利用するサポート情報についての検討を行った。検討事項は、現在のサポート情報は4種類であるが、それが妥当であるかのどうか、学習者にとってわかりやすいサポート情報の提示の仕方はどのようにするべきかなどである。具体的には、学習者に読んでもらう文章(教材)の文・文章構造の分析、読解に関する研究資料の収集と分析、日本語の語彙・文法に関連する資料の収集と分析などである。 来年度は、資料などを整理・分類した結果を新サポート情報としてWeb上のシステムに実現し、学習者に評価をしてもらい、その結果を改善に生かしていく予定である。なお、本年度の研究成果については、アメリカの学会で口頭発表を行った。また、出版された図書の1部分として公表した。
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