ブラジル日系社会における日本語を継承語として安定した状態で維持するための学習条件と社会的基盤を考察すべく、研究活動を行っている。平成18年度は、8月後半より約1ヶ月間現地に滞在し、主に「出自」という視点から、異なる移住時期や居住環境にある3家族を対象に彼らのこれまでの人生や子弟への日本語教育の方法、その継承に対する考えなどを調査した。尚、このインタビューは、移住者である1世代目の祖父母や2世代目の夫婦、3世代目の孫といったように世代別に行い、できるだけ率直で具体的なデータが得られるよう努めた。また、前年度に引き続き、ブラジル国内に点在する約10校の日系日本語学校も訪問し、各地の教師や日系団体役員に聞き取り調査を行い、調査票への記入を依頼した。さらに、滞在中の9月1日にはサンパウロ大学にて行われた「第十七回全伯日本語日本文学日本文化大学教師学会」および「第四回全伯日本研究国際学会」に参加し、前年度の調査結果の一部をまとめた「現代ブラジル日系社会に於ける日本語学校の地域性」と題した研究発表も行い、多くの研究者とも交流した。また、ブラジル訪問の途中には、アメリカのサンフランシスコに1泊し、現地の日本人町の歴史や現状について知る機会も得た。尚、前年度の計画では、その後3月にもブラジル現地で調査を継続することにしていたが、常用していたコンピューターが故障し急遽新機材を購入する必要が出たため、結果として渡伯は見合わせ、日本国内で資料整理や論文執筆に専念することにした。そして、この間には佐賀大学留学生センター紀要第6号に「ブラジル日系青年にとっての継承日本語教育」という本研究に深く関わる論文も発表した。最後に、この期間に実施できなかった調査は、平成19年度8月に現地で継続する予定である。
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