リコール(筆記再生法)の採点に用いられる分析単位の妥当性について、前年度までの予備実験の結果をもとに本実験を実施・検証した。予備実験では、リコールの分析単位として妥当性が高いものとしてSakai(2005)の定義に基づくアイデア・ユニット(IU)とBrazi1(1994)に基づくトーン・ユニット(TU)が抽出された。 そこで今年度はこの2つの分析単位を使ってリコールを採点し、両者を再生率、併存的妥当性(外部基準テストとの相関)、信頼性(ユニット分割一致率・採点者間一致率・テストの内的整合性)、クラスター分析の4つの観点から比較した。 被験者は日本人大学生83名。実験刺激は難易度がほぼ同じ英検準2級のモノローグを2種類用意し、外部基準テストとしてはCASECを用いた。実験の結果、IUはTUより厳しい採点尺度であることつまりIUを用いて採点すると再生率が低くなること、併存的妥当性や採点者間信頼性及び内的整合性には違いがないこと、ユニット分割一致率ではTUが著しく劣ることが明らかになった。またクラスター分析からは、IUとTUのどちらの分析単位を用いても分割する必要がない、言い換えると分割しないで1つのユニットとして扱った方がよいユニットの存在が示唆された。 この研究成果は、これまで全く検証されずに使用されてきた分析単位についてその特徴を明らかにし、今後リコールを用いるリスニング研究に1つの指針を提供するとともに、より妥当性・信頼性の高い分析単位を作成する手がかりを示したと言える。
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