1.研究目的 ベトナム語研究において、言語政策やその政策の下での言語生活に踏み込んで言語を捉えることにより、より深く言語情報を考察することができる。そこで、言語政策や言語生活のデータを集積し、その上で分析し、今後の『外国語としてのベトナム語』教育の展開に資する基礎研究を行なうことにした。 2.研究経過 本年度は、ベトナムの言語政策と言語教育に関する文献収集を行なった。まず、ベトナム社会主義共和国建国以来の言語事情全般を調査して、言語事情を史的に捉えてみることにした。特に外国語教育について、南北統一やドイモイ政策による対外開放・市場経済化が語種選択に与えた影響を、文献調査および現地における聞き取り調査によって明らかにしようと試みた。国策としての留学、研究生送り出しがベトナム語の語彙に与えた影響にも着目した。 同時に語彙教育の素材研究として、基本語の選定に着手した。生活の変化、国際情勢の変遷が語彙変容をもたらしたことは多くの先行研究が指摘するところであるが、この変容をベトナム語教育に対していかに反映させていくのかがきわめて重要である。そこで、ベトナム国内の言語学者に聞き取り調査を実施し、合わせて語彙の統計的処理の基礎作業を行なった。 また、言語生活の実態を見るために、越僑(在外ベトナム人)が運営するウェブサイトをチェックし、国内外のベトナム語運用状況を観察した。こうした運用状況の観察は次年度も継続したい。
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