本年度は、対象となる品川区立大井第一小学校所蔵資料について、(1)整理・分類および(2)デジタル化を実施した。(1)の整理作業に際しては、専用の調書を開発し、原資料の持つ必要なデータ(出版年、保存状態、著者、図柄、印刷状況、紙質など)を採取した。この作業は、近代以降の資料整理に関して専門の知識を持った人材を臨時に雇用し、所蔵先の小学校で実施した。なお、所蔵機関からの申し出を受け、対象となる全資料を、一時的に東京大学へ貸借できることになったのも大きな成果であった。上記作業を経た上で、全資料を適切な中性紙のボックスに一時収納し、保管をする環境が整備できた。(2)については、1000万画素を超える高性能のデジタルカメラを用いて資料を撮影し、デジタル・データを作成した。精緻な撮影作業を用いたため、点数は数点にとどまったが、劣化したコミックの撮影についての方法を確立することができた。 さらに、資料を所蔵している大井第一小学校において、現在では記録が失われてしまった資料寄贈者に関する調査を実施した。大井第一小学校の協力をえ、過去の児童の在籍台帳などを丹念に調査した結果、資料寄贈者の特定に成功した。今後は寄贈者本人から、資料に関する具体的な記憶や、小学校に一括寄贈した際の状況などに関する情報を得る作業に入る。 また、昭和20年代を代表するコミック・シリーズであるカバヤ児童文庫・カバヤ児童マンガブック全点のデジタル・アーカイブを実施している岡山県総合文化センター、さらにはカバヤギャラリーを併設するカバヤ食品株式会社(本社)に赴き、担当者からカバヤ文庫に関する閲覧やデジタル化の現況を聴取した。
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