平成19年度は、童子についての文字資料に翻刻されていないものが多いので、叡山文庫や比叡山、茨城県立歴史館等において史料調査を行なった。茨城県立歴史館では、赤外線が当てられて画像が鮮明に見えるようになった護法童子像の調査を行なった。これらの調査も踏まえて、論文「護摩修法による幻覚作用と憑座」を執筆し、日本宗教文化史学会が発行している『日本宗教文化史研究』12-1に発表した。「護摩修法による幻覚作用と憑座」においては、護摩修法の行ない方に着目し、僧侶による護摩修法で憑座(童子)が幻覚を見る理由について検討した。憑座が護摩修法の折に幻覚を見る理由については、様々なことが考えられるが、護摩壇に麻や罌粟をはじめとして燃焼させると有毒物質を発する供物が投じられていた点を明らかにした。この論文に引き続き、現在は、憑座と物の怪の関係について、仏教経典をもとに史料収集をし、研究しているところである。 また、中世の童子について研究する上では、寺院社会における稚児の研究が欠かせない。そこで、寺院社会の稚児がしばしば携わっていた舞楽についての研究を進めた。その研究成果の一部は、日本宗教文化史学会の6月例会において口頭発表した上で、論文「中世における内教坊の衰退」を執筆し、『古代中世文学論考』21に発表した。 中世における童子と寺院社会について検討する上で、信仰の問題も見過ごすことはできない。そこで、親鸞の信仰についての研究「親鸞の信仰と門弟の信仰」を真宗文化センターが発行している『親鸞の水脈』創刊号に発表した。
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