史料収集と研究成果報告については、以下の通り。 史料収集) 韓国:政府記録保存所(ソウル、大田) 中国:旧満鉄図書館(大連)、遼寧省図書館(瀋陽) 日本:後藤新平記念館、会津市立図書館、原敬記念館、東大史料編纂所 研究の現状) 政府記録保存所においては、朝鮮総督府の公文書を調査した。斎藤総督統治期において、満州における治安問題の会議録を中心とし、史料収集に当たった。遼寧省図書館では、1920年代の在地商工会が軍閥や日本の関東庁と面会し、内戦の影響から商権を保護するために動いていたことを示す史料を収集した。いずれの図書館においても、在地社会と日本の機関との交渉過程を理解できる史料に着目し、公式・非公式な植民地統治の実態を理解できる史料を集めることができた。 日本における機関の史料からは、日本の官僚が統治地域で行った支配の実態を理解できる史料が多く集まった。台湾の統治方針に強い影響力を持った後藤新平や石塚英蔵らの関連資料からは、日本の植民地機構が地域ごとの割拠性と、内地政府との相対的な自立性を持っていたことを理解することが出来た。 各植民地間の政策は、直接的な連動性や循環性を保証されていないことが分かった。そのため、官僚が個人的にノウハウを持って移動することを可能にする異動制度を持つことで、地域間の流動性や影響性の余地を残した反面、地域社会の特質に対応するために各植民地機関の独自性が強く見られることが分かった。このような相互作用の限界性を、民族特質や伝統社会の根強さに統治側が対応したという観点から論文や学会報告をまとめた。
|