本年は、3年間にわたる近代日本における歴史編纂に関する研究に関わる調査研究の最終年度として、これまでの調査研究を確認、小括するとともに、今後における研究の発展を想定した調査、考察をおこなった。大別すれば、以下のとおりである。 (1)鳥取県立博物館および鳥取県立図書館において、近代において編纂された鳥取藩池田家に関わる歴史書『鳥取藩史』稿本編纂に関わる収集史料や編纂主体者により残された記録を素材とし、日本近代における大名家史編纂に関する調査、考察をおこなった。さらに、近代における鳥取地方における明治維新認識の表象たる烏取藩内の「勤王志士」に関係する史料および文献の調査をおこなった。 (2)鹿児島県歴史資料センター黎明館において、同館に寄託所蔵される史料群「玉里島津家文書」における史料編纂記録や大久保利通関係文書に関する調査、考察をおこなった。今年度以降、成果報告をおこないたい。また、大久保利通関係文書について、国立歴史民俗博物館に所蔵される同名の史料群についても考察を深化させ、史料伝存と歴史像の変遷についての考察をおこなった。 (3)ソウル中央国立図書館における日本近代史に関する書籍の調査・収集をおこなった。同施設は、昭和20年(1945)まで朝鮮総督府図書館として機能していた施設であり、朝鮮総督府が収集、管理した書籍が収蔵されている。今回の調査においては、一昨年より調査・収集している「明治維新史」関係の書籍の複写・収集、戦前のソウルにおいて刊行された書籍における日本認識についての考察をおこなった。 今後は上記の調査を踏まえた報告書を作成、発表するとともに、引き続いて、日本近代の地域における歴史意識形成をテーマとした調査研究を推進していきたい。
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