本年度は儀式指図・絵図類に関する史料目録の作成と、写真撮影による収集につとめた。 まずは、手元にある平安時代から鎌倉時代の古記録より、「指図」「絵図」記事をデータベース化した。約600件の記事からなる。単独で伝来する指図・絵図では、その制作過程までを知ることは困難であるが、日記に挿入される指図・絵図を検討し、前後の記事をあわせて読んだことで、儀式指図がどのように作成・利用・転写されるのかを具体的に追跡することができた。その成果については、儀式指図の史料論となる論考を予定している。 つぎに、史料所蔵機関に存在する史料群について所在調査を行った。主なものは、(1)押小路家文書(国立公文書館所蔵)、(2)『諸公事指図』上・下(徳大寺家旧蔵・東京大学史料編纂所所蔵)、(3)菊亭家文書(京都大学附属図書館所蔵)である。 (1)については、指図・絵図の該当部分をデータベース化した。通常の文書目録は文書名の列記にとどまるが、本データベースは、各文書の中に指図・絵図が挿入されているか否か、その形態などを、さらに詳細に記したものである。指図・絵図の所在索引として使用に堪えるものを今後も作成することで、本研究の便宜をはかり、さらに儀式指図・絵図研究の進展を期したいと考えている。なお指図・絵図の現物については、そのうち半分をマイクロ撮影の紙焼き写真の形で入手した。平成18年度予算により残り半分を入手する予定である。 (2)については、すべてをマイクロ撮影の紙焼き写真の形で入手した。内容検討は関係文献のさらなる調査を行ったうえでの今後の課題である。 (3)については、目録がほぼ完成している。図書館備え付けの図書カードしかない状態であったが、本研究によりパソコンデータとして仕上げている。平成18年度はそのデータをもとに、速やかに図書館に調査願を提出し、現物との照合および内容に関する調査を予定している。
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