本年度は、1 出入筋にかかわる裁許状の収集 2 吟味筋の裁判記録である『御仕置例類集』のデータベースの作成、以上当初の実施計画にもとづき、以下のような調査・研究を行った。 1、科研費の旅費を活用し、中部地方や東北地方における自治体史など、主に活字化された史料をもとに、近世前期から中期の幕府裁許状を収集した。調査先は、静岡県立図書館・岐阜県立歴史資料館・愛知県立図書館・新潟県立図書館・福島県立歴史資料館と5都道府県にのぼる。それと平行して、関東地域の各県立文書館などで補足的な調査も行い、史料の採取などを行った。具体的な検証は今後の作業になるが、幕府の裁許のあり方を考える上では、関東地域や畿内地域との比較という意味で重要な基礎データを収集できた。このデータをもとにした出入筋関係の幕府裁許状のデータベースを、科研費の謝金等を活用してコンピューターへの入力を行った。 2、科研費の人件費を活用し、吟味筋関係の裁判記録である『御仕置例類集』のデータベースを作成し、現7062件と全てのデータの入力を終了した。入力項目は部・類・年代・件名・伺提出者などである。詳細な検討は次年度の課題になるが、例えばこのデータベースを検索することで、伺提出者たる各奉行(大坂町奉行・京都町奉行など)がどのような一件を担当し幕府に伺を提出していたのかが明らかになるだろう。
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