北海道立文書館・北海道立図書館・北海道大学附属図書館において史料調査をおこない、北海道を中心として近代におけるサケ漁規制の変遷の概要を整理するとともに、前年度までに収集した『北水協会報告』『大日本水産会報(告)』など明治期刊行雑誌類の関係記事を素材として、北海道を中心としたサケ漁の種川制度・人工孵化事業の実施状況について整理を進めた。 北海道立文書館所蔵の開拓使文書・三県期の公文書、および『函館新聞』の調査をおこない、十勝川および遊楽部川のサケ漁規制の導入過程とそのアイヌ民族との関係について事実の整理を進めた。また、遊楽部川に関しては、徳川林政史研究所(東京都豊島区)所蔵の旧愛知藩士の八雲町への移住に関する文書(八雲史料)の所在状況を調査したうえ、現地から東京徳川家に送られた書状、現地で作成された日記の一部の内容を調査した(翌年度も継続予定)。この地域について、開拓使による越後三面川を模範とした種川制度の導入過程、公共的な性格を持つこの制度の直接的な担い手を旧愛知藩士とする一方でアイヌ民族を初めとする旧来の住民をどう位置づけたかなどを具体的に解明し、そこでの問題点を検討することを今後の課題として得た。 北海道との比較を目的として、岐阜県立図書館・和歌山県立図書館などにおいて、水産資源の保護・管理を中心とした水産政策に関する史料を収集した。また、昨年に引き続き1910年代から1942年初めまでの『樺太日日新聞』を閲覧し、日本領南樺太におけるサケ漁規制の実施状況と先住民族の生活との関係に関する史料を収集した。
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