本年度は、佐渡島内および国立公文書館、国立国会図書館をはじめとする県外の機関が所蔵する原史料15点を調査・撮影し、また、写真やデジタルデータで15点の絵巻史料のデータを入手し、計30点の内容・構成などを分析した。現在確認されている佐渡金銀山絵巻の所在は100点前後と思われるので、全体の3割程の調査を行なったことになる。この結果、佐渡金銀山絵巻はその内容・構成からいくつかのカテゴリーに分類されるとともに、それらの年代の前後関係が明らかになるものもあった。次年度以降の調査データの集積に伴い、より詳細な分類を行なう。また、新たな佐渡金銀山絵巻の所在が複数確認され、次年度以降調査する予定とした。 佐渡金銀山絵巻は作者や年代の記載がほとんどなく、そこに描かれる鉱山技術・道具等の導入時期などから年代を推察する必要がある。そのためには絵巻そのものの分析だけでなく、当時の鉱山技術書等の文献調査が不可欠である。本年度は、従来の研究史を整理する目的も兼ね、鉱山・冶金技術等に関する各種文献資料を収集した。 さらに、ドイツボーフム大学東アジア学部日本史学科教授で、日本の鉱山に関する研究プロジェクトに従事しているR.マティアス氏と鉱山絵巻の分析、分類方法に関する情報交換を行なった。今後、ドイツをはじめとするヨーロッパの博物館が所蔵する日本鉱山絵巻、特に佐渡金銀山絵巻についての情報を提供いただく予定とした。
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