江戸中期から制作が始まったとされる佐渡金銀山絵巻は多数の所在が知られているが、作者・筆写年代・成立事情等が記載されるのは極めて稀で、それらの分類・位置づけを明らかにすることが大きな課題である。 本年度は、秋田大学、東京大学、東海大学、京都大学、九州大学などが所蔵する原史料21点を調査・撮影した。また写真やデジタルデータで11点の絵巻史料のデータを入手し、計32点の構成・内容等を分析した。現在所在が確認されている佐渡金銀山絵巻は約100点ほどを思われるが、昨年度約30点、今年度は32点のデータを蓄積したので、これまでに全体の6割程度の調査・分析を行なって事になる。さらに、鉱山技術書等の文献調査を行ない、絵巻に描かれる諸事象(坑内における各種排水器具等)の年代的検討を行なった。 この結果、昨年度おぼろげに見通しを立てた佐渡金銀山絵巻の分類がより明確となった。すなわち、巻頭の表現等から年代順に大きく4分類でき、さらにそれらの分類のなかでもいくつかに小分類できる見通しが立った。これは、佐渡金銀山絵巻が、作業工程や管理体制が変わるたびごとに内容の一部が更新されて制作されたことを示すものである。 今後は未調査絵巻の調査を引き続き進め、佐渡金銀山絵巻の分類指標の確立を目指す。
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