研究課題
本研究の中間年度では、前年度に得られた情報を整理しつつ、新たな研究の展開をはかった。スキャナーや、文献管理ソフト等の購入と活用により、さらに情報を整理し、分析を進めた(物品費)。また、前年度は様々な状況を鑑み、イラン現地調査を優先したが、2006年度は、グルジア現地での調査を行った。特にグルジア科学アカデミー東洋学研究所及び写本研究所、トビリシ大学の研究者との意見の交換と文献収集に務め、400年前の強制移住の衝撃が、どのような形で歴史的に継続し、また、現在のグルジア社会で捉えられているのか、その様相について詳しく観察を行った。また、ロンドンで開催された第6回世界イラン学会では、サファヴィー朝エリート社会におけるグルジア王家の位相について、家系の再構築を中心に研究発表を行った(外国旅費、その他)。成果として、本年は、主にペルシア語の文献を中心に、17世紀初頭のサファヴィー朝による強制移住政策を検討した英文論文"The Forced Migrations and Reorganisations of the Regional Order in the Caucasus by Safavid Iran"を出版した。また、強制移住やコーカサス地域の再編については、「第二章 国境と民族-コーカサスの歴史から考える」の中でも扱った。また、本研究では、強制移住を切り口に、単にイラン・グルジア史の枠に留まらない、辺境史の再構築と帝国とマイノリティー関係に関する新たな研究視角の構築を目指しているが、特にサファヴィー朝のコーカサス人統合策の代表的な事例であるグルジアのバラタシュヴィリ家出身者に注目した「忘れられた歴史と二つの系図が交差するところ」を発表した。このほか、本研究の成果は、一般啓蒙書である『コーカサスを知るための60章』などの著作にも一部反映されている。最終年度は、現地グルジアでの発表や邦文・欧文での出版などを予定している。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (4件) 図書 (2件)
国境・誰がこの線を引いたのか-日本とユーラシア(岩下明裕編著)(北海道大学出版会)
ページ: 31-56
Reconstruction and Interaction of Slavic Eurasia and Its Neighboring Worlds (IEDA Osamu and UYAMA Tomohiko (Eds.))
ページ: 237-273
東京大学大学院人文社会系研究科博士学位取得論文
ページ: 257
カフカース-ニつの文明が交差する境界の交差-(木村崇、鈴木董、篠野志郎、早坂眞理編)
ページ: 57-80