研究課題
本研究は研究代表者が単独で進める文献主体の研究であり、2年目である本平成18年度は、初年度の研究成果を承けて、その成果整理・理論化と成果公表とに重点を置いて活動を展開した。ユーラシア東方最大最後の帝国である大清帝国は、一面においては明朝を引き継ぐ中華王朝であるが、支配層に注目してみたとき、漢人とは異なる習俗・文化をもつツングース系満洲人が、生業は異なるものの文化的に親和性をもつモンゴル人と連合して建設・支配したユーラシアの帝国であるということができる。そしてその中核をなすのが史上著名な八旗制であり、満洲人は清一代を通じて八旗制の下に組織されていた。そこで、大清帝国の具有する中央ユーラシア国家的特質を八旗制の解明を通じて剔抉するという本研究の研究方針の下、本年度は第一に八旗制の支配構造・第二に帝国の全体秩序の研究の深化とモデル化を推進した。すなわち、八旗制は、帝室アイシン=ギョロ氏のみから分封された旗王とその家臣・領民たる旗人との間の主従関係という大原則の下、成員を厳格・明快な階層組織体系に編成した軍事=行政組織であった。そして階層組織に編成され旗王の臣下とされるという固い原則の下で、出自・来歴を問わずあらゆる政権参加者を編入・戦力化するという柔軟な運用が行なわれていた。一方、帝国全体に視野を拡げたとき、王公とその属下を一つのブロックとする支配のあり方は、漢地の漢人社会を除いてむしろ普遍的であり・帝国は一面において、自己の家臣・領民を率いる首長たちそれぞれが皇帝と主従関係を結び、爵制秩序のもと序列化されて連合したものとして描き出すことができる。この多様な地域・集団を統合する皇帝は、中華皇帝・大ハーン・転輪聖王などそれぞれに対応する君主としての位置づけを有して君臨していた。以上の成果を、別記の諸論考および多数の学会・研究会において発表し、成果還元・問題提起を行なった。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件)
Proceedings of the Second COE-ARI Joint Workshop"Dynamic Rimlands and Open Heartlands : Maritime Asia as a Site of Interactions "(K. Fujita (eds.))(Osaka University) 2
ページ: 224-237
平成16~18年度科学研究費補助金(基盤研究(B))「近代世界システム以前の諸地域システムと広域ネットワーク」研究成果報告書(研究代表者桃木至朗)(大阪大学)
ページ: 104-123
史学雑誌 115-9
ページ: 89-98
西洋史学 222
ページ: 77-80
史学雑誌 115-5
ページ: 266-273
満族史研究 5
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