本研究の目的は、中央アジアにおける仏教文化の時期と伝播経路を明らかにすることである。特にアフガニスタン、ウズベキスタン、タジキスタンなどの西トルキスタン地域で発掘されている仏教遺跡については、その年代についていまだ不明な点が多いため、これを慎重に検討する必要がある。そのため、まず遺跡の報告書を検討し、出土遺物や遺構のデータを集成した。特に、出土土器についての情報は、遺跡の年代を決定するために重要である。これによって、多くの仏教遺跡の年代を検討するための基礎データを作成することができた。 また、現地でしか入手できない情報を得るために、ウズベキスタンとタジキスタンに赴き、現地の研究者と意見交換を行うとともに、遺跡と出土遺物を実見した。ウズベキスタンでは、2世紀頃までに廃絶したとされるカンピル・テパから、仏陀を象ったとみられるテラコッタが新たに出土しており、クシャーン朝下の仏教の広がりがより明確になっていた。タジキスタンでは、アジナ・テパ、カフィル・カラ、カライ・カフィルニガンなどの諸遺跡を見学するとともに、その出土遺物の写真撮影を行った。出土している土器から考えると、これらの遺跡は6〜8世紀に活発に活動しており、仏教遺跡も、この年代に属することが判明した。さらに、これらの各遺跡間の年代差についても、土器を細かに分析することで明らかにできる可能性がある。 以上のように、西トルキスタンの仏教遺跡は1〜4世紀に属するものと、6〜8世紀に属するものとに二分される可能性が高く、今後は、こうした遺跡の出土遺物の特徴と分布を、より明確にする必要があることを示している。
|