今年度は、本研究を開始して1年目にあたる。17世紀前半のメキシコからスペインへの民間送金者のリストは、輸送船舶への商品登記簿をもとにして作成するため、まず夏までの3ヶ月間は、この登記簿のうち、今回使用する記録の選定をおこなった。選定をおこなうにあたっては、当該史料の大半が収められているスペイン・セビリア史のインディアス総合文書館のカタログの閲覧し、史料の現存状況を確認した。次に、当時の貿易に関する研究書を検討し、50年にわたる研究対象期間のうち、研究の効率を高めるために、サンプルとして妥当と思われる貿易状況(海賊の襲撃や海難事故が少なく、前後の年と貿易量が比較的似通っている状況)が存在する数年間を選び出し、閲覧する史料を決定した。8月には、セビリアの同文書館、および関連史料が保存されているマドリッドの国立図書館、国立歴史文書館で、3名の研究協力者とともに、必要な史料の読解と複写作業をおこない、彼らに対する謝金を科研費補助金より支出した。秋以降は、スペインで得たデータの読解作業を継続するとともに、これらをデータベース化する作業を進めており、現在もこの作業は継続中である。入力作業には、3名の研究協力者に助力を求めた。データは入力中ではあるが、現時点までにおおまかに把握できた傾向として、(1)世紀初頭には少額送金者も数多くいたが、世紀半ばには少数の多額送金者の全体における比率が増加すること、(2)植民地で販売した物品の代金の送金だけではなく、メキシコ在住者による本国への投資や物品購入目的での送金も重要であること、が挙げられる。今後は、史料収集とデータベース入力作業を継続し、この観察の妥当性について確認するとともに、この観察結果を説明する当時の経済状況について分析することが焦点となる。
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