一八年度は、社会的排除の制度的展開を主要テーマとして、引き続き、「よそ者」を選別し、救貧の有資格を規定する制度の実態と、その展開について調査した。 1)オランダの関連法を調査した結果、一九世紀半ばまで、オランダの救貧(および、よそ者の受容・排除システム)には、本質的な変更が見られないことが判明した。共和国の崩壊(一七九五年)は、制度の転換点を意味しない。共和国期に発行された救貧保証書は、その後も有効とされた(例:一八三一年の法規)。国内の社会的排除を考える上で、一九世紀後半のナショナリズム発展との関連性を念頭に考察する必要性が感じられる。 2)ロッテルダムの史料を基に、救貧保証書の提示の上、定住を許可された人々と市民権を新たに獲得した人々との重複度を探る目的で、データベースの構築をおこなった。現時点で、両者には若干の重複が認められた。救貧保証書を提示したよそ者が貧民であり、また市民権を取得したよそ者は中産層に属する、といった従来のイメージには、何らかの修正が必要である。つまり、救貧保証書制度は、貧民の流入に関する対策というより、全般的な(国内の)移民対策として捉えるべき側面が認められる。
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