本年度は主に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校とワシントンDCの米科学アカデミー文書館と米国国立公文書館にてリサーチした。 カリフォルニア大学ロサンゼルス校は、マンハッタン計画の際に放射線安全対策の責任者であったスタッフォード・ウォーレン大佐の文書を収蔵している。彼は1947年からは同校の医学部長として、米核実験に引き続き協力し続けた。今回の調査ではウォーレン大佐の文書の全体像を把握することができ、当研究のための関連資料を収集することができた。 核実験関連文書は1990年代になってやっとエネルギー省から米国立公文書館に移され公開され始めたのであるが、今回の米国立公文書館での調査では主に、米国原子力委員会生物学医学部の放射性降下物研究や放射線の人体に対する影響の研究に関する資料を収集した。さらに米科学アカデミー文書館ではABCC(原爆障害調査委員会)の文書を調査することができた。 収集した資料の分析に際しては、物理学者で『広島・長崎原爆被害の実相』(新日本出版社)の編著者である沢田昭二名古屋大学名誉教授の科学者としての助言を受けることができ、より深く収集資料の内容を理解することができた。 またアメリカ核実験被災者であるマーシャル諸島の住民の証言を1970年代から収集して著作を出版している東京国際大学の前田哲男教授や、近年中心となってマーシャル諸島の被ばく者研究を行っている早稲田大学大学院の竹峰誠一郎氏と中京大学非常勤講師の中原聖乃氏の両氏とともに、共著『隠されたヒバクシャ--検証=裁きなきビキニ水爆被災』(凱風社)を出版することができた。
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