研究期間最終年度に当たる本年度は、2007年9月ドイツ現代史学会(於東海大学)において、「地方としての国境一帝国直轄領アルザス・ロレーヌとドイツ国民国家(1871-1918)」と題する報告を行った。これは本研究の視点にそって、国民意識と地域意識の相関関係-相克関係と相補関係-を筆者がこれまで研究対象としてきた独仏間の国境地域アルザス・ロレーヌを題材として考察したものである。昨年度刊行したサーヴェイ論文(「19世紀ドイツにおける国民国家と地域」)においても指摘したように、国境地域における国民国家と地域の関係は、地域社会の視点から考察することによって、よりダイナミックなものとして把握することができる。この点については、2008年度に刊行予定である、『国境地域から見たヨーロッパ史』(仮題、山川出版社)において、より敷衍して論ずることにしている。また、昨年度進めていたドイツ第2帝政期の大都市における「郷土誌Heimatkunde」については、Hanover、Stuttgart、Munchenなどをケーススタディとして分析を進めた。またドイツ南西部のSchwarzwaldの郷土協会であるSchwarzwaldvereinの活動についても、夏季滞在時にStuttgartのヴュルテンベルク州立図書館(WLB)に所蔵されている同協会の機関誌を創立時から第2次世界大戦勃発までの期間にかんして閲覧を終えることができた。前者については、本年度の勤務校の紀要においてその成果を公表することを計画しており、また後者についても、Freibtirgにある同協会のアーカイブを訪問し、その資料を閲覧することで、さらに実証の精度を高めつつ、本年度以降、その成果を継続的に公表することにしたいと考えている。
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