本年度の研究の柱として、「立石寺の空間的把握」と「関連資料の蓄積」をあげることができる。 事前に、関連する文献を多数収拾し、あわせ同様の研究を実施している機関・研究者のアドバイスを随時受け、調査にいたる準備期間と位置づけた。立石寺の空間的把握については、現在の参道である根本中堂〜開山堂・奥の院までの各地区の石造物や、信仰関係資料の分布状況を把握し、見取り図を作成、その銘文の調査を実施した。なお、この調査の際に石造物の劣化状況も合わせて調査し、緊急性の高い資料を選定した。 また、県内で同様の聖地でありながら、調査・研究の及んでいない葉山信仰の調査もおこなった。中世末〜近世にかけ、隆盛を誇った大円院の墓地空間3箇所の調査を実施した。これは、本研究の対象地との比較検討のために、非常に意義の高い調査であり、来年度地元で実施されるシンポジウムで発表予定である。 今後の研究の方向性を明確にするために、県外で開催の研究会やシンポジウムにも多数積極的に参加した。また、あわせて他地域の聖地・霊場空間の実地踏査も実施している。 なお、本研究の調査地は、故人のそれに連なる人々や、その聖地を守る人々からすれば、大変デリケートな問題を多くはらんでいる。そうした関係者・地元での理解を得るため、現地での調査公開を随時実施するとともに、その成果還元として県内で墓石・石塔調査にかかわる研究発表を、西村山地域史研究会、天童・東村山地域史研究協議会(10周年記念大会)、山形民俗学会(総会・基調講演)を実施した。
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