北海道における士族屯田兵の事例を中心に、彼らが移住の際に母村から持ち込んだ陶磁器などの生活財や墓標等を考古学的に実測・調査し、彼らの物質文化に見られる母村からの影響、士族的な特徴や平民屯田兵との比較から見た階層性、移住の前後での変容等を明らかにするため、調査・分析している。 平成18年度は主に実地踏査と、現地調査を重点的に進めた。具体的には、平成17年度の調査成果を活かし、根室市和田、厚岸町太田などで、陶磁器・民具など生活財の調査及び聞き取り調査を行なった。また、初期の屯田兵墓地(和田墓地、和田旧墓地)など古い墓標が残る場所で悉皆調査を行い、墓標形態について母村からの影響を考察した。さらに、近世考古学の成果に照らしながら、陶磁器の品質など生活財に見られる階層差について比較検討を行った。また、収集した生活財や墓標のデータをデータベース化し、北海道移住者の物質文化について統計的分析を行った。その結果、根室市和田でも太田の場合と同様に屯田兵は士族に相応しい高価な生活財を持つ一方で、墓標は専門の石工を介さず現地の石材で調達していた。北海道移住者の物質文化に前回同様の「食い違い」が認められた。なお、この研究成果の一部は平成19年7月刊行予定の『近世・近現代考古学入門』慶応義塾大学出版会(共著)の一部に「民俗学・民具学・物質文化研究と近現代考古学」として収録される予定である。また、2006年12月に開催された第31回日本民具学会大会においても「近代北海道移住者の生活財と墓標」として口頭発表を行った。
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