本研究は、古代墳墓の被葬者像を追究するに有効な基礎資料の獲得・蓄積とその整理等を目指すものである。本年度はその第1年目にあたり、これまで十分な蓄積をみていない火葬人骨の鑑定を進めることを第一の目標とし、加えて未報告となっている火葬墓、土壙墓の資料調査や新規発見の情報収集を第二の目標とした。 本年度の活動では、まず未報告ないし未鑑定の奈良・平安時代の火葬人骨を全国的に探索し、結果、西日本を中心に20件余りを選出することができた。また、その鑑定に向けた借用交渉および関連情報の収集も併せて行っている。この中で特筆されるのは、現在火葬墓の最北端の岩手県の資料を対象にできたこと(火葬を受容した蝦夷か?)、あるいは2個の骨蔵器が並んで埋納されている事例(「夫婦墓」か「親子墓」か、被葬者の構成を考えるのに重要な資料)を数件含めることができ、その鑑定成果に大きな期待がもたれる。また、火葬墓では類例の少ない銅鏡の副葬事例など、被葬者の階層性を検討するに重要な情報も収集され得た。また、形質人類学、考古学両分野の専門家との話合いを通じて、来年度以降の分析・検討の方針を定めることもできた。 次年度は、本年度の活動をベースにして、形質人類学の専門家と共に人骨の鑑定を進め、年度後半には関連情報を併せて整理・検討する予定である。さらに、本年度に続いて人骨や火葬墓、被葬者に関する研究などの情報収集に努め、データベースや資料集成の作成に盛り込めるよう配慮して行く方針である。
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