本年度は、これまで奈良文化財研究所と中国社会科学院考古研究所が共同調査でおこなった中国唐長安城太液池の調査で出土した唐三彩について、実見した資料の観察記録の整理およびデータベース化をすすめた。また、同じく奈良文化財研究所が中国河南省文物考古研究所と共同ですすめている鞏義市黄冶窯の発掘調査で出土した資料についても、これまで数次にわたって収集してきた唐三彩の窯跡および出土資料の観察記録を整理し、現在データベース化をすすめているところである。鞏義市黄冶窯の唐三彩については、巽淳一郎氏を中心に研究所内で研究会が4度にわたっておこなわれ、6月と3月にはビデオ撮影による発掘調査の内容について報告をおこなった。とくに河南省文物考古研究所との共同研究では、黄冶窯より出土した発掘資料について、日中双方で図録を出版する予定で、すでに昨年度中国側で出版されたのを受け、今年度は日本側で刊行する準備を進めてきた。この図録の執筆を一部担当し、担当の器物を中心に、これまで中国の雑誌や報告書に掲載された資料を収集するとともに、データベース化をすすめた。 また、本年度は唐長安城に比較的近く、主要な唐三彩の産地のひとつである陜西省銅川黄堡窯(耀州窯)の窯跡遺跡を実見した。耀州窯博物館など黄堡窯出土唐三彩の資料収集をおこなうとともに、黄冶窯出土資料との比較を通じて各窯の特徴や共通の属性を整理するとともに、太液池出土資料との比較研究をおこなう基礎データを収集した。中国の陶磁器のコレクションを有する上海国立博物館や陝西歴史博物館などを訪れ、唐三彩資料の収集もおこなった。
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