近年、日本では子どもが巻き込まれる犯罪が増加し、子どもの安全・安心な生活空間を構築するための研究の重要性が指摘されている。また、かつての子どもの生活空間が子どもの安全・安心な空間として優れていた点を分析し、現代社会に生かす研究も必要とされている。 そこで、本研究の目的は、子どもたちの生活空間の構造や様式、そこに内在する危険を解明するとともに、現代社会に生きる子どもたちの生活空間を安全・安心なものとして創造するための方策を地理学の立場から提案することにある。 平成17年度は、子どもの安心・安全マップが、子どもの生活空間の危険性を減少するためにどの程度寄与しているのかを検討するために、名古屋市内と富山市内の安心・安全マップを収集するとともに、これまで、他分野で行われてきた安心・安全マップづくりについてどのような取り組みがあるのか、文献研究を実施した。 その結果、子どもの安心・安全マップづくりは平成17年度、全国で盛んに行われるようになったが、その手法は多様であり、都市計画や心理学、教育学などの研究者が行っているマップづくりの標準化はなされていないことが明らかとなった。また、収集されたマップを整理した結果、マップの精度やねらいは、マップ作成の中心になった人物の意図や描画の基図や作成ツールにより、大きく異なったものになること、地理情報システムを用いると、最初に作成するのは大変であるが更新が容易でWebでも情報交換できるようになることなどが明らかとなった。
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