研究概要 |
本年度は以下の5つの柱をおいて,都市-農山村関係に関する調査・研究を行った。 1.GIS(地理情報システム)を用いて,都市と農山村のハード面でのネットワーク(道路網や鉄道など)の史的変遷を分析するために,明治期以降の旧版地形図からネットワークに関するデジタルデータの作成を試みた。本年度中にデジタルデータは完成する予定であり,次年度以降の具体的なネットワーク分析の準備ができた。 2.上記1にも関連するが,農山村におけるハード面のネットワーク整備がいかに行われてきたかも含めて,その政策的側面について以前より研究を進めてきたが,本年度はその研究成果を最終的にとりまとめ,図書の一部として発表した(筒井一伸「国土空間の生産と日本型政治システム」,所収:水内俊雄編『空間の政治地理』(朝倉書店))。 3.都市-農山村交流のソフト面の実態(住民の意識や数字としてあらわれない成果など)を把握するため,都市-農山村交流の先進地でのフィールド調査を行った。具体的には,河川の源流をキーワードに交流を促進している奈良県川上村,鳥取県日南町,木(林業)をキーワードに交流を促進している,熊本県小国町,宮崎県諸塚村,愛知県豊根村などにおいて,担当者,関係者への聞き取り調査を行った。 4.また上記3に関連して,熊本県小国町,宮崎県諸塚村,鳥取県日南町,愛知県豊根村では「都市-農山村間のフローをもたらす公共サービス供給」を政治的に推し進めてきた新旧の首長への聞き取り調査を行い,都市-農山村交流を促進するに至った経緯などのオーラルヒストリーの蓄積を行った。 5.都市-農山村交流を促進するためのツールについても調査を行った。具体的には「地図」や「絵図」をどのように活用しているかについて,島根県出雲市などでその事例の調査を行った。
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