研究概要 |
本年度は以下の4点を中心に研究を進めた。 1.研究実施計画において当初予定していたルーラルプランニングに関する文献およびネットワーク分析に関する文献の吟味に加え,より広く地理学における都市-農村関係に関する研究の系譜の再検討を行った。この成果は図書の一部として発表すると同時に(筒井一伸・今里悟之「地理学の研究動向-空間論からのアプローチ-」),ベトナム国家大学・ベトナム地理学会からの依頼論文として英語(一部ベトナム語)にて発表した(TSUTSUI Kazunobu "Economic Geography of Urban-Rural Relations in Japan")。 2.上記1に関連するが,社会学においても「ポスト生産主義」をキーワードとする新たな都市-農村関係を探る研究が進んでおり,関連書籍に関するレビューを発表した(筒井一伸「ブックガイド:日本村落研究学会 編『消費される農村-ポスト生産主義下の「新たな農村問題」-』」)。 3.GIS(地理情報システム)を用いて,都市と農山村のハード面でのネットワーク(道路網や鉄道など)の史的変遷を分析するためには昨年度デジタル化を行った地図データでは不十分であると判断したため,引き続き,昨年度は行わなかった明治初期の旧版地形図以外の地図のデジタルデータ化を試みた。 4.都市-農山村交流のソフト面の実態(住民の意識や数字としてあらわれない成果など)に関して比較考察を行うため,都市-農山村交流などのフローを活発に行っている先進農山村の現地踏査を行った。具体的には,農事組合法人を中心に「農」をキーワードに交流を促進している三重県伊賀市,昨年度から継続的に調査を続けている鳥取県日南町などにおいて,担当者,関係者への聞き取り調査を行った。
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