研究概要 |
2005年4月〜8月に,本研究の基礎資料とするために,中国の農山村と少数民族居住地域における地域社会や生活文化,民族政策などに関する資料を収集した。同時期に,中国寧夏社会科学院の協力のもと,中国訪問のビザや調査許可を取得し,フィールドワークを行う準備を進めた。 そして,2005年9月に,中国上海市と寧夏回族自治区において資料収集と聞き取りを行った。中国における具体的な活動は次の通りである。(1)華東師範大学や寧夏社会科学院,寧夏大学を訪問して,書籍や統計資料,学術論文などの資料を収集した。(2)これらの研究機関において,現地研究者と学術交流や情報収集を行った。(3)寧夏回族自治区中部・南部地域の農山村を訪問し,ムスリム(イスラム教徒)である回族の生活習慣や宗教活動,地域社会の特徴と変容,および宗教的・民族的アイデンティティに対する宗教活動の影響などについて,参与観察と聞き取りを行った。 その後,2005年10月〜2006年3月までは,日本において資料収集を継続するとともに,それまでに収集した資料,および聞き取りで得た調査票やアンケート用紙写真などを整理・分析した。 このような研究活動の結果として,本研究の成果の一部を,日本地理学会の機関誌である『地理学評論』第78巻第14号(2005年12月発行)において,「中国・回族の聖者廟参詣と地域社会-寧夏回族自治区の事例-」のタイトルで雑誌論文として発表した。 この論文では,中国寧夏回族自治区における回族住民のイスラーム・スーフィー教団の聖者廟への参詣活動において,モスク(「清真寺」)を中心として形成される地域社会である「教坊」が重要な役割を果たしていることを明らかにし,さらに,この宗教活動を通して,地域社会への帰属意識が強化されていることを考察した。
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