グローバリゼーションにともなう民俗文化の変容を、棚田を中心的事例として検討する本研究は、2005年度は資料収集に重点を置いて作業を推進した。第一に、石川県輪島市における棚田村落の現地調査である。「平成の大合併」が進むなか、本年度(平成18年2月1日)に門前町を吸収合併した輪島市においては、新たな地域的アイデンティティの確立が重要な課題となり、「棚田」をはじめとして文化的景観、歴史的資源にはさらなる役割が期待される一方、過疎化・高齢化の趨勢は押しとどめがたく、地元側の困難や矛盾は依然として解消されていない。そのような現状について、聞き書きならびに参与観察を実施した。第二に、棚田表象に関わるメディア関係者からの聞き取り調査である。棚田景観への関心の高まりにあたって、写真、映像といったビジュアルメディアの役割を看過することはできない。棚田イメージを演出し生産する文化生産者(写真家、映像作家、編集者)からの聞き取りを実施した。第三に、棚田表象に関わる資料調査である。棚田イメージの形成、保護運動の展開、農政や観光行政、地域振興政策の展開をトレースするため、京大所蔵文献を中心に、北海道大学、札幌大学、石川県立図書館などで資料収集を実施した。次年度以降、さらなる資料収集とともにその分析を進め、棚田をめぐるグローバル/ナショナル/ローカルな文脈の配置を多角的に検討する予定である。
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